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まれにいいこと

小さないいこと探しながら、今日もなんとか暮らしています。

今週の読書 『猿の見る夢』桐野夏生著

  f:id:Yotoro:20190114211110j:plain 『猿の見る夢』桐野夏生

 

抜群の喜劇!でも、私的にちょっと鬱った以下2点。

①何もしていないのに悪者になる人もいる一方、企てたのに何のお咎めもない人っているよね… 

②こういう人↓も、たしかに多いよね…

「人がドアを開けてくれるのを、今か今かと脇で待っててさ。

誰かが開けた途端に、それっと一緒に入ってくる人は大勢いるわよ。

そして、ちゃっかり先頭を走ってるの」ーーp.181-182  

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仕事、家庭、愛人…すべてがうまくいっていた59歳会社員、薄井。

ある日、妻が連れてきた謎の占い師、長峰が現れたところから、

人生の歯車が狂いだす。

母の死から生ずる遺産問題、家庭崩壊、愛人との別れ、

出世街道まっしぐらだった仕事にも暗雲が…

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何が面白かったって、一見、真摯で仕事のできるおじさまだった薄井、

内実は自己中ですべてにおいて打算と下心が満載。

その内面の描写がリアルすぎて、落ちぶれていく様に

同情のかけらすら生まないどころか、完全に喜劇。

おもしろくてスラスラ読めた。

 

私が嫌な気分になった2点は、どちらも物語中の重要人物のひとり、

会長秘書・朝川に関わるもの。

計算高く、口が軽いので、様々な問題を巻き起こしていく。

それなのに、彼女自体が問題視されることも恨まれることも一切なく、

周りに混乱と不幸が広がっていくのみ。

そんな彼女と比べた時、色々なことに巻き込まれ、動けば動いただけ

失墜していく薄井に少しは同情できる気がする。