今週の読書 『みんな邪魔』真梨幸子著
「小説家の頭の中って、どうなっているんだろう」といつも思うが、中でも真梨幸子さんは別格。
彼女の作風は、他では絶対に見られない。
登場人物、誰もが主役になる。
一見何のつながりもない人たちや事件が、しっかりとつながっていく。
登場人物一人ひとりに焦点を当て、数々の奇妙な事件を作り上げ、
最終的には、全部がつながるのに、煙に巻かれるような感覚。
まさにイヤミスの女王。天才。
彼女の作品はどれも面白いけれど、映像化は難しいだろうなぁと思うものばかり。
時にメモを取りながら、付箋をつけながら読み、最終的には必ず読み返す。
今週読んだ1冊は、『みんな邪魔』真梨幸子著
1970年代に一世を風靡した少女漫画、秋月美有里作『青い瞳のジャンヌ』。
人気絶頂の中、物語が奇妙な形で未完のまま打ち切られ、作者も姿を消す。
しかし、いまだに残る根強いファンたち。
そのファンクラブの幹部、「青い六人会」で起こる人間模様と事件。
DV夫に悩む女、借金苦から詐欺を働く女、ニート女のゆがんだ母親との関係とその介護生活、
子どもの引きこもりと家族不和に心を病む女、子離れできず、家庭不和を生む女。そして、
全員が40代の中、1人、32歳の美しいアイドル的存在。
タイトルの通り、邪魔にされた人物が一人ひとり消えていくのだが、
読者が思う犯人と作者が描き出す結末が完全に異なるのが見事。
その結末ですら、多くの謎が残るのだけれど。
物語を、あり得なそうで、あり得なくない設定にしているのが、
「オタク」と「更年期」というキーワード。
こういう世界は十分にあり得ると思う。
ここまで事件化することはないにしても、心理戦では十分にあり得るだろう。
本来は純粋な思いをもってファンクラブに集う人たちであったろうに、
結局は誰もが自我と他者への嫉妬の暮らしの中で、いがみ合うようになる。
私が同じような立場にあって、唯一共感できたのは主婦の生活に不満を抱くジゼルの言葉。
私のカレンダーには、終わりがない。(中略)ただただ、無機質な数字が無意味に並ぶカレンダー。朝起きて、朝食を作って、洗濯をして、掃除をして、昼食を作って、買い物に出て、洗濯ものを取り込んで…。(中略)なんて、みごとな習慣。そんなことをしたいなんてひとつも思っていないのに、ちゃんとこうやって、時間になれば洗濯物の前にいる。ーーーp.259
なんか、以前に書いた自分のブログを思い出して、改めて反省。
結局のところ、この本は、
自分を認めてほしい、居心地のいい居場所が欲しいという人間の欲を
描いた作品なのかもしれない。