今週の読書『麒麟の翼』東野圭吾/『ナニカアル』桐野夏生
読書に集中できない日が多く、「今週の」というよりは「ここ最近の」読書ですが...
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ナイフで胸を刺された後、瀕死の状態でたどりついた、日本橋・麒麟の像の下で息絶えた男、青柳。
事件直後に発見された不審な男、八島。八島は警察に追われ、不慮の事故で死亡してしまう。所持品から青柳の物が見つかり、また青柳との接点も判明、状況は否応なしに八島犯人説で動いていく。
一方、八島の子供を身ごもり、彼の無実を信じ続ける彼女。
また、捜査がすすむ中、被害者から一転、労災隠しの汚名を着せられ、世間の反感を買う、青柳。一家も世間から冷遇されるようになる。
捜査線上、生前の青柳の行動から解き明かされる真実。そして、瀕死の状態で麒麟の像までたどりつき、息絶えた青柳が、家族に残したかったメッセージとは?
読みやすく、しかし、最後に意外な真相と意外な犯人が用意されているという、東野圭吾ワールド全開の作品でした。
ただ、単なる殺人事件にとどまらない、家族愛が描かれた作品で、ここ最近メンタルの弱い私は、最後の方は涙、涙でした。
最後に、容疑者・八島の彼女が、八島の無実を証明してくれた恩を「一生忘れません」と加賀(刑事)に感謝する場面があるのですが、
「そんなことは忘れてもいい」加賀はいった。
「忘れちゃいけないのは、その子のために何があっても負けないと決心したことだ」ーーーp.322 引用
本題からは少しそれますが、
「何があっても子どものために負けないという決心」が、今の私に一番必要な言葉でした。
この本を読んで、少し気持ちが楽になった気がします。
2冊目は、桐野夏生作『ナニカアル』
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タイトルから、イヤミス系の小説を期待していたのですが、『放浪記』や『浮雲』の作者として知られる、林芙美子の半生を描いた作品でした。
戦時下、陸軍の嘱託作家として戦場に赴き、次々と手記を残した林芙美子。
戦時下の社会、それに翻弄される作家たち、林芙美子を取り巻く状況と思想変遷の描写が圧巻。
また、実際に、林芙美子には養子がいたのだが、それが実は、毎日新聞記者・斉藤とW不倫の末、妊娠、出産した実の子であり、それを秘密裏に養子にしたことが死後明らかになったという、桐野夏生の推理小説?が展開されている。
どこまでが事実で、どこからが桐野夏生さんの創作なのか、
林芙美子がどういう作家だったのか、彼女の作品も読んでみたい。
なぜ桐野さんは林芙美子に関する小説を書こうと思ったのか......
読後に、好奇心があふれ出てきて、いろいろなことが知りたくなってしまう作品。
ということで、「この本は、2度も3度も楽しめます!」とお伝えしておきます。