今週の読書 『奴隷小説』桐野夏生著
『奴隷小説』 桐野夏生著
先週読んだ、桐野夏生作『猿の見る夢』が面白かったので、
もう1冊桐野さんに挑戦。
誰も幸せにならない短編集。
拉致、監禁、収容所、束縛された村社会、閉ざされた劣悪な労働環境、
のがれられない精神的苦痛...
まさに奴隷、のがれられない環境や精神状態に身をおいている、何かしらに囚われている人たちの物語。
娘の自死にとらわれる母親の話「REAL」や
アイドル志望の女の子とそれをとりまく追っかけのとらわれた
精神環境を描写した「神様男」。
そういう、精神的にとらわれている人の話は、小説としてとても分かりやすい題材。
でもこの本、いわゆる身も心も囚われの、奴隷状態の物語が中心で、
まさに異色の1冊。
誰も幸せにならない物語。
桐野さん、どうしてこの本を書こうと思ったの?
嫌な気分になるけれど、確実に存在するであろう、こういう世界。
自分はいかに幸せか思い知る。
と同時に、私も何かにとらわれているのかなと確認したくなる。