カナダの教育現場から⑤ ~登下校で見える、子どもの世界~
カナダでは、子どもの登下校は、親、もしくはそれに準ずる者(以下、保護者と呼ぶ)の同伴が義務となっている。
明確な法制度が存在するわけではないので、
「何歳まで?」とは、誰も正確に答えられないが、
「だいたいG6(小学校6年生、11~12才)までだろう」
というのが、大方の見解である。
小学校4、5年生頃になると、学校の承諾を得て、生徒だけで登下校させる家庭も出てくる。
現代の親世代が子どもの頃、その多くが自分たちだけで登下校していたのに対し、現在のほとんどの子どもは、保護者同伴で登下校をしていると言われている。
登校時間になると、決められた場所に、生徒たちはクラスごとに列をなす。
担当教諭が誘導し、クラスごとに順次校内に入っていく。
下校時間になると、各クラスの担当教諭がクラスごとに生徒を引率し、迎えに来た保護者の顔を確認をしながら、子供を一人ずつ引き渡していく。
法で定められたことではないのにも関わらず、完全に義務化した、この保護者同伴登下校。
当然、メリット、デメリットがある。
メリット
・事故、事件に巻き込まれる可能性が減る。
→ おそらくこれが、保護者同伴登下校が義務化した最大の要因。
・登下校の様子から、子ども達の関係性が垣間見られる。
・学校教諭(特に担任)とのコミュニケーションの場として活用できる。
・親同士の情報・意見交換ができる。
→ いじめ抑制の効果がある。
→ 入学式、授業参観、運動会等がない為、登下校時に子供の学校生活が見られるのは貴重。
→ 保護者間コミュニケーションで、必要な情報(習い事やイベント情報、子どもをめぐる状況の確認など)を得たり、遊ぶ約束をしたりすることができる。
・不適切な異性(同性)間交友を阻止できる。
・登下校の時間帯を通して、親子の会話が増える。
デメリット
・送迎のための時間調整が難しい。
→ 特に共働き世帯は、子どもの学校送迎のため、仕事の時間調整が必要となる。
→ 親が送迎できない場合、送迎のために人を雇ったり、親が帰宅するまでの間、面倒を見てくれるベビーシッターを雇ったり、就学時間前後に、登下校まで世話をしてくれる、託児施設を利用したりする。
・仕事が探しづらくなる。
→ 送迎のために人を雇ったり、就学時間前後に託児施設のような場所に預けるには、それなりの収入がなければならず、結果として、仕事がしづらくなる一面もある。
・子どもの自主性が育たない。
→ 親がスケジュール管理をすることにより、子どもの自立を遅らせているという意見がある。
・親の子離れが遅れる。
→ 子どもを単独行動させることに、不安を抱く一因となっている。
→ 登下校時に、子どもの様子を垣間見ることで、無用な心配をしてしまう親も多い。
・子どもの友だちとのプライベートタイムが失われる。
→ 日本のように、ワイワイ友達とおしゃべりしながら登下校するというプライベートな時間がない。
(日系カナダ人の子が、日本で体験入学した際、一番楽しかったこととして、給食経験と共に、「友達と一緒に登下校したこと」を挙げることがよくある。)
・運動不足の最大の原因と言われている。
→ 車で送迎をしてしまう保護者も多く、カナダ児童の運動不足最大の要因とも言われている。
(昨年、「日本の子どもたちの自主登下校習慣が、いかに子どもの運動不足解消につながっているか」がニュースで取り上げられた。)
・厄介な親との付き合いに、翻弄されることがある。
→ 様々なお願いごとをされたり、登下校での子ども達の様子をみた保護者が、「子どもがいじめられているのではないか」と騒ぎ立てるようなことがある。
・スタバのハッピータイムが利用できない!
→ ハッピータイムという、スタバ商品が割引(半額や、1個買ったら1個無料など)になる時間帯が1、2週間に1度の頻度であるのだが、午後3時スタートなため、子どものお迎え時間の都合上、利用できない…
いろいろと書いてきたが、
一番のメリットは、事件、事故に遭遇する確率が減ること
一番のデメリットは、親子ともに自立が遅れることだろうと思う。
登下校同伴を皮切りに、親がどこにでもついて行かなければならない風潮が生まれ、子どもを単独行動させることに極度な不安を感じる親が増えている。
また、子どもも、自分でスケジュール管理をしたり、計画を立てる習慣が身につかない。
親離れ、子離れが難しくなる状況を生んでいる。
たまに日本に帰ると、日本の子ども達は、友達から得た情報や遊ぶ約束で盛り上がっていたりして、ずいぶん大人びているなぁと感じる。
登下校を自分たちですることで学んでいる、責任や自立の精神もあると思う。
ただ、ここカナダにおいて、子どもの登下校に同伴することは、普段全く知り得ない学校生活を垣間見たり、子どもを取り巻く環境を観察したりする貴重な時間であり、今はこの状況を楽しみたいと思っている。